闇の果てから


ありがちなのに名作

 闇の果てからは、「よくある話」である。
幼児期にレイプされた経験を持ち、それゆえに男性恐怖症になった女性が、愛す
べき男性を得て過去に立ち向かい克服する様を、現在進行形の連続幼児誘拐殺人
事件を軸に描く......と書いてしまえば、とたんに陳腐になってしまう話であ
る。
 しかし、丹念な心理描写と事件の展開とが、ありがちな「レイプされた過去か
ら立ち直る女性」の話を名作にまで引き上げている。
 作品中では、主人公の他に幼児期に性的いたずらを受けた女性刑事が、レイプ
まで行くケースは少なくても、見られた触られた見せられた触らされた程度の性
的暴力は決してレアケースではないということ、そして幼児が大人に対して如何
に無力であるかを語っている。この作品を読んで同調・感情移入してしまう素地
を持つ女性が、少なからず存在することを、作者自身意識しているのだろう。
「辛抱強い愛情さえあれば、性的暴力によって受けた心の傷もいつかは癒され
る」というのは楽観的すぎるし、犯人はあまりにもステロタイプだし、冷静に考
えれば割り引く点はいくつかあるのだけど、一気に読ませる展開はそれ以上に魅
力的。
 まんがというのは、テーマではなく描き方なんだなあと、つくづく感じさせる
作品。


津雲むつみのページに戻る
まんがの城へ戻る
ホームへ戻る