清水玲子は、ある意味で怖い作家である。
『月の子』では、読者の置かれている現実(原発事故、戦争、環境破壊等)を
「悪夢」だと、「もうそんなこわいユメは忘れておしまい」と言う。「その悪夢
に取り残された私たちはどうすりゃいいの?」と思わずにはいられない。
『22XX』もそうだ。
ジャックは食欲を持つロボットであるがゆえに、必要もなく血肉になるわけで
もないのに生き物を殺し食べる自分に苦しむ。
結局、最後にジャックは、自分のプログラムを書き換え食欲を捨てる事で「生
き物(植物を含んだ生命体)を食べて生きる罪」からは逃れられるのだが、私た
ちは食べなきゃ生きてゆけない。「罪をおかしつつ、それでも生きてゆく理由」
というのを、この作品は与えてくれないのだ。(子孫を残すため? 子孫を残せ
ない人間はどうするのよ?)
「だから、完成度が落ちる」とか「きっちり救いを用意するべきだ」とか言うつ
もりは毛頭ない。
この、心の奥の見えないフリをしていたい所に爪を立てられるような読み心地
が、ベタベタのメロドラマをそれだけで終わらせない清水玲子の大きな魅力に
なっているという話なのだな。