月の子


あなたは納得しましたか?

『月の子』の真の主人公は、ティルトである。(ええ、断言しますとも)

 自分を捨て、仲間を裏切り、ありとあらゆるものを犠牲にしてセツの幸せのた
めに努力するティルト。そのティルトの手によって物語のすべての歯車は回され
る。
 それが物語の推進力であり、また犠牲にするものが大きいために「何故、そう
しなければいられなかったのか?」という動機に説得力がなければいけないのだ
が。

 自分のなりたかった自己の姿を他者に投影して、その他者(なりたかった自
己)のためにできる限りのことをすることで自分自身を救う。
 そんなティルトの行動は、強い劣等感と絶望に裏打ちされている。どんなに自
分が努力してもなりたい自己にはなれない、それゆえの、代償行動だからであ
る。
 劣等感くらいは誰でも持っているが、それを前向きに克服することができない
絶望感もなければ、ティルトの動機に納得はできないのではないかと思う。

 ティルトの動機は、はたして、多くの読者の共感を得ることができる動機だっ
たのだろうか?
(私自身がどうだったのかは、推して知るべし)


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