この作品のテーマの象徴的エピソードは、4巻の8章「五杯目の砂糖」であ
る。
コーヒーに決まって五杯の砂糖を入れる元プロの殺し屋が、自分が人を殺せな
くなった理由を語る。
「その誰かさん(ターゲット)は、コーヒーを頼んだ。
そして砂糖をいれたんだ。
一杯、二杯……
三杯、四杯……
五杯目をいれたところで
いつも飲んでいるコーヒーの味が口の中に広がった。
誰かさんは、それをうまそうに飲みやがった。
それで俺は銃をおろした。」
それは、銃口の向こうのターゲットを、自分と同じ様に甘いコーヒーを美味い
と感じる、自分と同じ「人間」であるという認識をした瞬間の表現である。
この作品では多くの人々が、あっけなく死んで行く。
しかし、作者はその死を通じて語るのだ。
「汝、人を殺すなかれ」と。