”Love”


少年誌の中のフェミニズム

 この物語は、スポーツというジャンルにおいて、女であるというだけで負わさ
れた性差というハンディキャップのために、男(洋平)にかなわなかった女
(愛)の悔しさが動機になって、話が進んでゆく。
 少年漫画という男の購読を一応前提にした雑誌で、性差(体格・体力差、犯さ
れる性と犯す性の差)に甘んじなければならない女を、女の立場から描いた作品
というのは、実はそうない。
 まず、そういう題材を扱う作品が少ないし、扱う作品の殆どがそういう弱い女
の姿を楽しむ傍観者の立場や、弱い女を「守ってやる」男の立場から描かれてい
る。そして、それらの作品の中では、どうにもならないその差に苦しみ悩む女の
姿も、どうにもならないことがわかっていてそれでも立ち向かわないではいられ
ない女の心も描かれない。
 そんな作品群の中で、少女を主人公にして、現実に多くの女達が今だ結論を出
せないこの題材を真正面から取り上げているという点で、この作品は極めて非凡
と言える。

 この作品のモチーフは、一昔前の少女漫画に多く見られたもののように思う。
 男装した少女、少女を排除した男子校、スポ根、対立しながら魅かれる恋。
 少女達にかつて与えられてきたモチーフが、少年誌を通じて少年達に与えられ
ているわけだ。
 この作品を、愛の気持ちに少しでも感情移入しながら読んだ少年達がつくる社
会では、今、当り前にされている女性差別が少しは違ったものになるのかもしれ
ない。


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