バッハ文献集
はじめに

目次


バッハと音楽学

西洋音楽を代表する作曲家 Johann Sebastian Bach (1685-1750)の幅広い作品群は、生前から現在まで、研究の対象として情熱的かつ多角的に解明が進められてきました。その長い間の知識の蓄積は膨大な量になります。まずその分野における研究にどのようなものがあって、それぞれのジャンルに認められる問題点はどのようなものであるのかをよく見極める、という過程ひとつをとっても、大変骨が折れますので、今日バッハ研究を専門とする第一線の研究者でさえも専門外のジャンルの議論に立ち入ることにはとても抵抗感があります。

現在まで出版された文献学方面からの研究は、文献学の研究史で概述しますが、すでにあまり役に立つようなものではなくなってきているばかりか、一つの印刷物としてそれを包括するような本は将来みることはないと思われます。実際、印刷物としてデータを管理することは、非常に非効率であって、新 しい記事や論文が頻繁に発表されている現状にあっては、そういった印刷物は製造不可能です。それに代わる電子出版がこのプロジェクトです。ここでは、いつでも最新の情報を取り入れることができることに加え、ユーザが素早く検索が行えるような機能を 作成してみました。


文献学の研究史

バッハの文献に関した研究は、音楽学界では歴史が古くかつ進んでいます。まず最初に出たのが、Max Schneiderが収集した当時の文献で、「バッハ年鑑」第2巻(1905年)に発表されました。彼は、480件をリストしていますが、その殆どがドイツ語の文献で、1800年から1904年までをカバーしています。その5年後の「バッハ年鑑」第7巻(1910年)に彼は320件を新しくリストアップしています。それ以降、「バッハ年鑑」は5年置きにバッハ文献を収集し出版する伝統を守ってきました。一番最近のものは、Karin Germerdonkが編纂したもので、2000年に出版されました。

1950年以降は、いくつかの独立した音楽文献のリストが作成されています。Bibliographie des Musikschrifttums と、後にRILM abstractsが加わった他、バッハの生前から死後50年までに出版されたものについては、Bach Dokumenteが「新バッハ全集」の補足として1963年より出版されています。


研究の弱点

「バッハ年鑑」にリストされている最新の文献リストと比較してみると、上で述べた今世紀初期のMax Schneiderのものは、あまりにも不完全であると思わざるをえません。例をあげましょう。「バッハ年鑑」第40巻(1953年)では、1945年から1952年までを941件でカバーしています。それ以降のリストは以下のようになっています:1958-1962 (807件), 1963-1967 (715件), 1968-1972 (884件), 1973-1977 (845件), 1978-1980 (560件), 1981-1985 (1144件), 1986-1990 (1174件)。単純に計算すると、19世紀に出た文献は800件で、1958年から1962年にかけて出版されたものより少なくなってしまいます。

ここから19世紀の文献がいかに不完全であるかがおわかりでしょう。しかし、この方面研究は続けられなければなりません。これらのリストを細かく見ていくと、当時のバッハ像が世界各国でどのようであり、またどのような違いがあったのかが分かってきます。このような文献学の知識は、古い文献がどんな歴史的価値を持っているのかを知る上でとても参考になります。

19世紀初期は、バッハ復興運動の見地から特に重要です。出版社が初版の準備を急ぐ一方、J. N. Forkelは1802年に本格的なバッハ伝を発表しました。その背景には、母国を偲ぶ愛国心がありました。その後、Mendelssohnが《マタイ受難曲》を取り上げたり、Bach Gesellschaftが動き出す背景などはまだまだ研究の余地が残されています。

同時期に英国でもバッハ復興運動が繰り広げられました。この動きはドイツのものとは直接関係していませんでしたが、ドイツからの移民やバッハ崇拝者とのコンタクトがあってのことでした。当時の顔ぶれはバッハの末息子のJ.C.Bachに加え、C.F. Horn, S. Wesley, A. F. C. KollmannそれにM. Clementiが挙げられます。Max Schneiderのリストには、これらの包括的な情報が欠けているため、まだ研究の余地が十分あります。


この「バッハ文献集」サービスについて

この「バッハ文献集」をインターネットで公開する主な目的は、世界中のバッハ研究者に最も新しい情報を提供し、それを効率的に役立ててもらうことにあります。このデータベースは元々私用のために作成したものですが、こうして皆様に使用して頂ければこの上ない喜びです。しかし、データ公開となると、質の高いサービスを目指さねばなりません所以、責任がとても重くなります。データのアップデートや修正など、全ての仕事をより本格的に行う必要があります。しかし、これは大変な時間と努力が要ります。そこで、ユーザの皆様にお願いがあります。ユーザ全員が何らかの形で運営のサポートに関わって欲しいのです。できることで結構ですから、まず貢献される方へをお読みになり、ご一考くださるようお願いします。

このサービスはどなたでも無料で何度でもアクセスできます。しかし、長年蓄積したデータを盗用されないように、ある程度のデータ保護をさせて頂きます。データの検索結果は、一回につき最大300件までリストされます。もしそれで不十分な場合には、再考致します。

データ検索は、図書館でおなじみのキーワードによる検索機能が使用できます。検索には、いくつかのキーワードを組み合わせて行うこともできます。

その他にもこのシステム特有の機能がありますので、そちらもご活用になってみて下さい。文献のデータには、楽曲や議論の争点などによって検索ができるように、いくつかの特殊なフィールドが加えられています。これを検索機能として使用することにより、例えば、『神学的見地から議論した《マタイ受難曲》』や、『数象徴の見地から議論した《平均律クラヴィーア曲集》』などのように、あるグループの文献を抽出することが容易に可能となりました。また、それぞれの文献データには、引用を示すフィールドも用意してあります。そのフィールドの長さにより、引用頻度の高さが分かるのですが、これは近い将来、文献の知名度を測る物差しとして機能に組み込みたいと考えています。


データ収集の領域

現在、データベースは約21,000件の文献を登録していますが、正確な数と最終変更日は、ホームページ上に表示してあります。このプロジェクトは、学術的な目的で公開しているため、文献の選択は、以下のようなガイドラインを設けています:

また、以下の文献は登録をしません:

書評は、通常その母体となる文献の一部として登録されます。書評が極端に単体の論文に近いものはその例外とします。


最終変更: 2004年9月27日